ON AIR REPORT 放送レポート
EP03 2026年7月25日(土)23:00〜23:55 本レポート

ゆる麻布 氏(ゆるあざぶ)

連続起業家/Xフォロワー半年で6万人達成

謎の起業家が、素顔を隠したまま3万部を叩き出した。

X(@yuruazabu)に突如現れ、半年でフォロワー6万人。本名も顔も明かさない。それなのに、初著書はすでに3万部を突破した。すばる舎編集長・小寺裕樹が読み解くのは、PHP研究所から『こうやって、すぐに動ける人になる。』を放ったゆる麻布 氏。他社の編集長が、この謎に包まれた起業家の輪郭を引き出していく。

ゆる麻布 氏

この対談は、どういう“越境”なのか

「@本が読みたくなる、ラジオ」には、ひとつの決めごとがある。自分が編集していない、他社の著者の本を、現役の編集長が読み解く。 担当編集という立場のしがらみを離れ、一人のプロの読み手として著者に向き合う——その実践が、この回だ。

読み解くのは、すばる舎編集長・小寺裕樹。相対するのは、PHP研究所から『こうやって、すぐに動ける人になる。』を上梓した、連続起業家・ゆる麻布 氏。X(@yuruazabu)上で炎上を厭わず、切れ味鋭い言葉を投げ続けてきた“謎の人物”と、ビジネス書のプロが初めて正面から向き合う。利害から自由な読み手だからこそ、著者の本質にまっすぐ切り込める。

今日の一冊——美和子と翔太が出会う『こうやって、すぐに動ける人になる。』

ある朝のオフィス。翔太がデスクの前で、パソコンを開いたまま手が止まっていた。やるべきことはわかっている。でも、どうにも着手できない。美和子が通りがかり、その様子を一瞥して言った。「また止まってる」——そして差し出した一冊が、ゆる麻布 氏の『こうやって、すぐに動ける人になる。』だ。

著者のゆる麻布 氏は、ブラック企業を退職後に起業し、複数の会社を経営する連続起業家。X(@yuruazabu)でわずか半年でフォロワー6万人を超え、経営者や投資家から注目を集めるインフルエンサーでもある。この本が伝えるのは「やる気が出たら動こう」ではない、逆だ。動けない原因は、心の中に自分で作り上げた「心のハードル」にある。そのハードルを下げる29の思考のコツを、著者は情熱を込めて伝える。「考えすぎて動けない」「失敗が怖くて一歩が出ない」「やる気が出るのを待っている」——そんな状態のビジネスパーソンに向けて、ストレートに喝を入れてくれる一冊だ。

翔太が口を開く。「なんかこの本、読者を『お前』って呼んでますよ。珍しくないですか?」。美和子が静かに答える。「そう。でも回りくどくなくて、本音っぽくて、私は好きなの」。

聴きどころ ①「お前」と、大経営者の言葉と——なぜこの文体でなければならなかったのか

ゲストトークは、ゆる麻布 氏が放った言葉から幕を開けた。

「本で一発目から『お前』っていう本を、多分見たことがないような気がする」

自らそう言い切るこの文体は、最初から狙ったものではなかった。一度、いわゆる「出版らしい文章」で書いてみたという。「私は」「あなたは」と丁寧に書き進めてみたものの、面白くない。そこでX(@yuruazabu)のテイストに合わせて書き直したら「こっちやな」と即決した。X(@yuruazabu)上でバズったコンテンツが下敷きになっているのだから、読者の反応はある意味で折り紙付きだった。

「本を使ってねパワハラされるんですよ」

とゆる麻布 氏自身が笑う。口調はパワハラっぽい。でも内容は「すごく優しい」。小寺編集長は「本当に稲盛和夫さんや松下幸之助さんが語ってるような、仕事観・人生観の本質的なメッセージを、現代風に翻訳して自分のエピソードとともに語っている」と評した。「背中をボンッと押される」という感覚が積み重なって、3万部という数字を生んでいる。

聴きどころ ②突如現れた謎の起業家——その「誰こいつ」な素顔

X(@yuruazabu)上でのゆる麻布 氏のイメージは「怖い、偉そう、よく炎上している、年齢は50代くらいかな」——あつみも収録前はそう思い込んでいたと明かした。実際に会ってみると、その印象は鮮やかに覆された。

「みんなね、初めて会った時に『誰こいつ』みたいな顔するのやめてほしい」

PHP研究所・大隅編集長との最初の打ち合わせも、カフェでの珍道中だったという。大隅編集長は念のため「行方不明だったら警察に呼んでみて」と会社にことづてを残してから向かった。「顔がわからないから、どれが本物かわからない」——それがゆる麻布 氏という存在の面白さでもある。

大阪での出版記念イベントでは、大隅編集長とゆる麻布 氏のどちらが著者かを当てる「クイズ」を冒頭で実施。その日チャラい格好をしてきた大隅編集長に、会場の7〜8割が手を挙げたという。「みんな見る目ないね」とゆる麻布 氏が笑う。

現在のXフォロワーは8万5,000人。さらには「この1年で15キロ痩せた」という話題も飛び出し、「前の方が良かった」という声が多いというオチも添えられた。

聴きどころ ③書籍化に至るプロセス——大隅編集長が持ち込んだ「ロングセラー戦略」

なぜ数ある出版オファーの中でPHP研究所・大隅編集長を選んだのか。ゆる麻布 氏の答えは率直だった。「大隅さんが一番熱情が高かった。あと提案が売れそうだった」。

ポイントは、大隅編集長がゆる麻布 氏の"珍しさ"を正確に把握していたことにある。ビジネス系インフルエンサーのフォロワーは通常ほぼ男性になる。だがゆる麻布 氏は男女ほぼ半々だ。その強みを理解した上で、大隅編集長はあえて「インフルエンサー感を消す」方向を提案した。結果、書影にゆる麻布 氏のアイコン写真は一切入れず、本文中も「ゆる麻布」の名前は帯にあるくらいで、一見すると普通のビジネス書に見える仕上がりになっている。

小技のこだわりも随所に仕込まれている。「思考のコツ29」とうたいながら、29という数字のうちひとつは「肉」で表記されている。気づく人は気づく、気づかない人はそのまま読み進める——その絶妙な仕掛けが編集者の腕でもある。「30にしなかったのが天才」と小寺編集長も唸った。

目指すはロングセラー。大隅編集長とは「30万部」という目標を共有しているという。インフルエンサーの本がバーンと売れてすぐに失速するパターンを、この一冊は意図的に回避しようとしている。

聴きどころ ④インフルエンサー・著者・経営者——使う脳みそが全部違う

あつみが切り込んだ。「著者と経営者、何が違いますか?」。ゆる麻布 氏の答えは想定外の深さだった。

「全然違う。さらに言うとインフルエンサー、著者、経営者、全部違いすぎて。もう使う頭が違いすぎて大変ですよ」

インフルエンサーは「いかに火力のあることを発信するか」に全集中する。炎上を研究し、議論を生むネタを探す。著者になると逆で、炎上より深みが求められる。140文字と6万文字では必要な深さがまるで違う。そして経営者になるとクリエイティブからロジックへ、数字と感情の戦いになる。

切り替えはできない。だから「この期間はこっちの頭」と決め、せめて1日単位でモードを切り替えて対応しているという。

DDDDという造語も飛び出した。「みんなPDCAって言うけど、PPPPになってるじゃないですか。プランしかやらない」——だからドゥ、ドゥ、ドゥ、ドゥ。まず動く。材料がない状態でプランを立てても、考える用がない。X(@yuruazabu)を始めた当初は1日50投稿を続けた。「50入れたら1個ぐらいバズる。そのバズを研究する。次は2個バズるようになる」——そうして半年で6万フォロワーに至った。

また、「失敗は科学、成功はアート」というテーゼに小寺編集長が反応した。失敗パターンは有限で知っておけば避けられる。一方、成功要因は無数にあり再現性がない。

「成功談はただの自慢であって、参考にならない。でも失敗は避けられる」

「絶対売れない本はわかるけど、ベストセラーは予測できない」

著者と編集長が、それぞれの現場から同じ結論に辿り着いた瞬間だった。

さらに「他責脳から自責脳へ」というテーゼも登場した。サラリーマン志向から起業家志向へ——その核心は「最初から無理だと決めつけずに、とりあえず行動できること」。人の期待や制限の中で生きる人生を抜け出し、自分の人生を自分で経営できるようになる。そのためのハードルの下げ方が、この本の29のコツだ。

収録中のゆる麻布 氏と小寺裕樹編集長
スタジオでの収録風景

聴きどころ ⑤修羅場はネタだ——地獄を見てきた人間だけが書ける本

小寺編集長は、本書を読んで「修羅場がたくさん出てくる」と感じたという。

「修羅場来たらネタ1個増えたな、でいいんですよ」

命に関わる修羅場でなければ、人生のネタが増えるだけだ——ゆる麻布 氏はそう言い切る。炎上するコメントを書いてくる人も「絶対好きじゃないと書かない。ファンですよ」と笑い、「別にへこまないですよ。楽しい楽しい」と即答した。

その姿勢を受けて、ゆる麻布 氏はこう続けた。

「それっぽいことってAIで書けるようになってきていると思うんですよ。でも深さない、深みないじゃん。やっぱりおもろい人ってどんな修羅場を経験してきたかとか、想定外のことが起こっているとか、普通の人が想定できないことが起こらないと面白いってなかなかならない気がして。おもんない人がどんだけおもろい本書こうと思っても無理ですよね」

面白い人間が書くから、面白い本になる。小寺編集長も「どれだけ地獄を見てきたか、そういうところにワクワクするというか、特にAI時代なんで、やっぱりそこで差別化できるかっていうのがある」と応じた。EP03は、この番組が何を引き出したいのかを、あらためて示した回だった。

収録を終えた出演者一同
収録を終えて(MUSIC BIRDスタジオにて)

越境がもたらしたもの

編集を担当していない読み手だからこそ、ゆる麻布 氏の本質を利害から自由に引き出せた。「お前」という一人称の選択がX(@yuruazabu)バズコンテンツの翻訳であること、インフルエンサー感を消すという逆張りのロングセラー戦略、「肉」で表現された29の遊び心、失敗は科学・成功はアートという経営者ならではの認識論、インフルエンサー・著者・経営者で「使う脳みそが全部違う」という多重人格的な仕事の実態——。

X(@yuruazabu)上では炎上を量産する"怖い人"が、スタジオでは「クマさんみたい」と形容されるほど柔らかかった。だがその柔らかさは逆張りの設計思想でもある。怖いから来る人の「質が高い」——この論理は、本の文体にも、コミュニティにも、このラジオ出演にも一貫している。

ゆる麻布 氏という人物の輪郭を、これほど立体的に浮かび上がらせた55分。放送を聴けば、なぜこの謎の起業家が3万部を叩き出したのか、その答えが腑に落ちるはずだ。

ゆる麻布 氏に会えるイベント、あります

謎に包まれた存在、と思いきや——実はゆる麻布 氏はリアルイベントを定期的に開催している。「みんな怖がっちゃって来ないんですよ」と笑いながら、「ぜひ遊びに来てほしい」と呼びかける。

情報はX(@yuruazabu)と公式サイト(yuruazabu.com)から。ビジネスコミュニティ「ゆる麻布ラウンジ」も運営中。本書に紐づいたLINEでは毎週月曜日に配信あり——「ゆる麻布シャワーを浴び続けていただいて」とのことだ。

ゲスト著者プロフィール

ゆる麻布 氏(ゆるあざぶ)

連続起業家。M&Aやデジタルマーケティングを専門とするIT畑の出身。新卒で入ったブラック企業で理不尽な働き方を強いられた経験から一念発起して起業し、現在は複数の会社を経営する。起業や経営、投資、会社の売却といったテーマを忖度なしの本音で発信し、X(@yuruazabu)のフォロワーはわずか半年で6万人に達した。経営者や投資家から最も注目を集めるインフルエンサーのひとり。本名・顔・運営する具体的な会社名は非公開で活動する。

『こうやって、すぐに動ける人になる。』書影

『こうやって、すぐに動ける人になる。 気づけば、ラクに成果が出てる「思考のコツ29」』(PHP研究所)

「考えすぎて動けない」人のために書かれた、29のコツ。やる気を待つ必要はない。心のハードルを下げればいい。ブラック企業で苦しみ、起業を重ねてきた著者の実体験から生まれた行動変革の一冊。発売後3万部を突破。

GUEST'S WORKゲストの著作・活動

ON AIR放送情報

  • 放送日時:2026年7月25日(土)23:00〜23:55
  • 放送:全国110局のコミュニティFMで放送
  • ♪ 小寺裕樹 選曲:アレキサンドロス「渡り鳥」(ゆる麻布 氏の著書をイメージした一曲として)

ABOUT@本が読みたくなる、ラジオ

「@本が読みたくなる、ラジオ」は、自分が編集していない、他社の著者の本を、現役編集長が読み解くという決めごとを持つ対談ラジオ番組です。担当編集という利害から自由な読み手だからこそ、著者の本質にまっすぐ切り込む。ナビゲーターのあつみゆりかとともに、全国110局のコミュニティFMで放送中。

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文責:編集部 Toshi Kinoshita