たかもりくみこ 氏
一般社団法人コンシャスペアレンツジャパン代表/家族セラピスト/日本人唯一のDr.Shefali認定コンシャスペアレンティング&ライフコーチ
「何者かにしようとしなかったこと」
——大学より先に、息子が受け取っていたもの
第7回。PHP研究所編集長・大隅元が読み解くのは、Gakkenから『ただ見守る科学的子育て』を放ったたかもりくみこ氏。三兄弟を一橋、慶應、東京藝大に導いた「ただ見守る」子育て。だが著者自身が語るのは「大学がゴールではない」という言葉だ。学歴の先に、息子は何を受け取っていたのか。出版記念イベントで本人が明かした言葉を、他社の編集長がまっすぐ読み解く。
この対談は、どういう“越境”なのか
「@本が読みたくなる、ラジオ」には、ひとつの決めごとがある。自分が編集していない、他社の著者の本を、現役の編集長が読み解く。 担当編集という立場のしがらみを離れ、一人のプロの読み手として著者に向き合う——その実践が、この第7回にも貫かれている。
読み解くのは、PHP研究所編集長・大隅元。「これしかやらないシリーズ」累計50万部超を手がける現役編集長だ。相対するのは、Gakkenから『ただ見守る科学的子育て』を上梓したたかもりくみこ氏。利害から自由な読み手だからこそ、著者の本質にまっすぐ切り込める。
今日の一冊——美和子と翔太が出会う『ただ見守る科学的子育て』
番組は、ある場面のナレーションから幕を開ける。テレワークの昼休み、オンライン画面越しにどこか疲れた顔をしている翔太。画面の向こうで小さな声が聞こえた気がして、美和子が尋ねる。「子どもが?」
翔太はため息をつく。「最近うちの弟、勉強しなくて。親が怒ってばっかりで、家の空気が最悪らしいんですよ。」美和子は少し間を置いてから、手元の一冊をカメラに向ける。「これ、読んでみて。お母さんに渡してもいいかも」
著者のたかもりくみこ氏は、一般社団法人コンシャスペアレンツジャパン代表。日本人唯一のDr.Shefali認定コンシャスペアレンティング&ライフコーチとして、18年以上、のべ6000人以上の親子をサポートしてきた人物だ。心理学・脳科学・東洋思想・マインドフルネスを統合した独自メソッドで、「本来の力を発揮するつながり方」を体系化してきた。
たかもり氏自身もまた、子育てで何十回も「親をやめたい」と思ったひとりだった。発達グレーで癇癪持ちの三男との日々に行き詰まり、学び続けた末にたどり着いたのが、「ただ見守る」という子育て法だった。その三男は後に東京藝大に現役合格。長男は一橋大、二男は慶應大。 三兄弟すべて公立育ち、塾は高3の8月からという省エネ子育てだったという。
本書が伝えるのは、技術でも管理でもない。子どもにとって安心安全な「心の空間」をつくり、親が「ただ、いる」こと。毎朝10秒、目をしっかり合わせて送り出す。1日1回スマホを置いて、一緒におやつを食べる。それだけでいい、と著者は言う。
「……え、それだけで?」翔太がつぶやく。美和子は静かに言った。「親が頑張るほど、子どもが動かなくなる。この本にも、そういう研究結果がいろいろ紹介されてるのよ」
聴きどころ ①「存在の否定」——絶対やっちゃいけないことを、私はやってしまった
大隅編集長が最初に触れたのは、本書に流れる母親自身のマインドセットだった。たかもり氏は、長男・次男は「大変だけど楽しくやっていた」と振り返る。だが三男は違った。1歳半の頃からすでに手に負えず、こちらが振り回されて怒ってばかりになる。「この子が悪い」——そう思ってしまったという。
「中学になる頃には不良か、ドラッグ犯罪みたいな真っ暗な未来しか見えなくて、しかもなんでこの子を産んじゃったんだろう」
存在の否定は絶対にやってはいけない、と本にはどれも書いてある。それでも自分はそう思ってしまった——たかもり氏はその告白を隠さない。1人目の子どもだったら、また違ったかもしれない、とも語る。きれいごとで終わらせない、この率直さこそが本書の説得力の源になっている。
聴きどころ ②「彼のそのままを丸ごと受け容れた」——母のエネルギーが変わった瞬間
三男の東京藝大合格は、第一志望とは別枠での記念受験だった。しかも共通テストの3日前、三男はこう言い出す。「倫理ゼロ勉で行く。そっちの方がかっこいい」。
「何それ、って感じだったんですけど、彼のそのままを丸ごと受け容れたときが、多分一番私のエネルギーが変わった瞬間だったんじゃないかな」
最後まで残っていた「こうあってほしい」という期待が、完全に砕け散った瞬間だった。そこから三男の集中力は一変する。月曜から日曜まで、朝8時半に家を出て、絵を描いて帰ってくるのが夜9時半。たかもり氏がこうあってほしいというエゴを手放すという無意識の変化が起きたことで、三男も自然に変わっていった——そんな逆転の構造が、この一冊の核にある。
聴きどころ ③「ただ喋っているだけ」でいい——おやつタイムを尋問にしない科学
本書が説く「1日10秒」の実践例として話題になったのが、スマホを置いて一緒におやつを食べる時間だ。「今日どうだった?」とは聞く。だが、そこから深掘りしない。
「それを、ただ喋っている以上にやろうとすると、結局尋問になりませんか? なんで喧嘩したの、原因はどっち、みたいな。そうすると、だんだん親と喋るのが嫌になってくる」
親は心配や愛から聞いているつもりでも、子どもには詰問として届いてしまう——その行き違いが積み重なると、思春期には誰も何も話してくれなくなる、とたかもり氏は指摘する。絵本の読み聞かせのように「毎日やらないと崩れる」習慣ではなく、誰でも、忙しい人でも5秒からできる方法を突き詰めた結果が、この「ただ、いる」だったという。
聴きどころ ④「私はこれでよかったんだ」——親子それぞれの“本質タイプ”を知る
本書には、たかもり氏が開発した独自の診断「本質タイプ」が付属する。リーダー・俺様女王タイプ、繊細こだわりタイプ、お坊さんタイプ、アーティストタイプなど8〜10種類。ちなみにたかもり氏自身は「繊細こだわり」タイプだという。
「自分を知ることで、私はこれでよかったんだ、というふうに本当にほっとされて、泣かれる方もいらして。なんかこう、ふるさとに戻ってきたような感じもするのかな」
子どものタイプだけでなく、親自身のタイプを知ることで関わり方が変わる——大隅編集長も「これマネジメントにも使える」と即座に反応する場面があり、番組内でも余談ではなく、本質的な広がりとして受け止められていた。
聴きどころ ⑤「絵本の読み聞かせと、何者かにしようとしなかったこと」——息子から贈られた言葉
出版記念トークイベントで、当の三男が語った言葉がある。子育てで「良かったこと」を聞かれ、彼はこう答えたという。
「絵本の読み聞かせをしてくれたことっていうことと、あとは何者かにしようとしなかったこと」
こっちの方向に行かせようとしなかったことが良かった——本人の口からそう語られたという事実が、本書の主張を何よりも裏付けている。たかもり氏は「大学がゴールではない、その後の人生の方が長い」と語り、この先の変化をリアルタイムで伝えていきたいという思いも明かした。
越境がもたらしたもの
編集を担当していない読み手だからこそ、たかもり氏の本質を利害から自由に引き出せた。「存在の否定」という誰もが避けたい告白から始まり、「じゃあキミの思うようにしたらいい」という手放しの瞬間、そして息子自身の言葉で締めくくられる——担当編集なら聞きづらいことも、越境の読み手だからまっすぐ問える。大隅編集長自身の「これはマネジメントにも使える」という反応も、越境の読み手ならではの発見だった。
たかもりくみこ氏という人物を、これほど立体的に浮かび上がらせた55分。放送を聴けば、なぜ「ただ見守る」ことがこれほどの結果を導いたのか、その答えが腑に落ちるはずだ。
ゲスト著者プロフィール
たかもりくみこ 氏
一般社団法人コンシャスペアレンツジャパン代表。親子・家族関係の専門家、そして日本人唯一のDr.Shefali認定コンシャスペアレンティング&ライフコーチ。名古屋大学法学部を卒業後、心理学・東洋思想・脳科学・マインドフルネスなど幅広い分野を学び、18年以上にわたり、のべ6000人以上の親子・家族をサポートしてきた。発達グレーで癇癪持ちの三男との子育てで、何十回も「親をやめたくなった」という絶望を経験しながら、たどり着いた「ただ見守る子育て」は、長男の一橋大学、二男の慶應義塾大学、三男の東京藝術大学への現役合格という形で結実した。現在は「コンシャスフル心理学」講座の認定講師養成と、セラピスト養成クラスを展開している。著書に『子どもが幸せに育ち自立する頑張らない子育て』(創藝社)、『男の子を大きく伸ばす方法 ダメにしない秘訣』(さくら舎)ほか。
『ただ見守る科学的子育て 3兄弟が一橋、慶應、東京藝大に合格! わが子に主体性が勝手に身に付く最も簡単な方法』(Gakken/2026年3月2日発売)
技術でも管理でもなく、子どもにとって安心安全な「心の空間」をつくり、親が「ただ、いる」こと。1日10秒の見守りが、子どもの主体性を引き出す。著者自身の実体験から生まれた、実践的な子育ての技術が詰まった一冊。
GUEST'S WORKゲストの活動・関連リンク
- たかもりくみこ 公式サイト(個人セッション)↗
- 一般社団法人コンシャスペアレンツジャパン(CPJ)公式サイト ↗
- ブログ ↗
- X(@kumikotakamori)↗
- 本質タイプ診断 ↗
- 既刊:『子どもが幸せに育ち自立する頑張らない子育て』(創藝社)/『男の子を大きく伸ばす方法 ダメにしない秘訣』(さくら舎)
ON AIR放送情報
- 放送日時:2026年8月22日(土)23:00〜23:55
- 放送:全国110局のコミュニティFMで放送
- ♪ 私を作った一曲:STELLA「candle in my heart」(たかもりくみこ 氏 選曲)
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「@本が読みたくなる、ラジオ」は、自分が編集していない、他社の著者の本を、現役編集長が読み解くという決めごとを持つ対談ラジオ番組です。担当編集という利害から自由な読み手だからこそ、著者の本質にまっすぐ切り込む。ナビゲーターのあつみゆりかとともに、全国110局のコミュニティFMで放送中。
文責:編集部 Toshi Kinoshita