松本 義史 氏(まつもと よしふみ)
損害保険ジャパン株式会社 勤務/現役会社員著者/『売らない営業』著者
全国5,000人中最下位から、社長賞へ。
——「売るのをやめたら、売れた」現役保険マンの逆説。
第9回。すばる舎編集長・小寺裕樹が読み解くのは、新星出版社から『売らない営業』を上梓した松本 義史 氏。損害保険ジャパンに勤めて20年、いまも現役の会社員でありながら、入社10年目には全国およそ5,000人の営業の中で最下位に沈んだ過去を持つ。そこからどうやって「社長賞」を受賞するまでに至ったのか。他社の編集長が、その転機の中身にまっすぐ迫る。
この対談は、どういう“越境”なのか
「@本が読みたくなる、ラジオ」には、ひとつの決めごとがある。自分が編集していない、他社の著者の本を、現役の編集長が読み解く。 担当編集という立場のしがらみを離れ、一人のプロの読み手として著者に向き合う——その実践が、この回にもある。
読み解くのは、すばる舎編集長・小寺裕樹。相対するのは、新星出版社から『売らない営業』を上梓した松本 義史 氏。利害から自由な読み手だからこそ、著者の実体験に率直に踏み込むことができる。会社員をしながら本を出す、という珍しい立ち位置の著者に、小寺編集長は何を見出すのか。
今日の一冊——美和子と翔太が出会う『売らない営業』
取引先を出たのは、もう日が傾いたころでした。翔太は美和子と並んで、帰りの電車に揺られています。今日の商談も、手応えのないまま終わってしまった。窓の外を流れる街明かりを見ながら、翔太はぽつりとこぼしました。「あんなに準備したのに、また決まらなかったです」。美和子は、かばんから一冊の本を取り出しました。「これ、ちょうど読んでたところ」。タイトルは『売らない営業』。
著者の松本義史さんは、損害保険ジャパンに勤める、営業歴20年の現役の会社員です。けれど、はじめから売れていたわけではありません。入社10年目、商談がまとまらないまま15連敗。全国およそ5,000人の営業のなかで、最下位にまで沈んだ人でした。 成果を出そうとするほど空回りし、売り込みにも根性論にも、限界を感じていたといいます。
転機は、上司のひと言でした。「こうなったら、20連敗を目指してみよう」。その言葉に、ふっと肩の力が抜けた。「いっそ、売るのをやめてみるか」。そう決めて臨んだ商談で、松本さんはいきなり連敗から抜け出します。売るのをやめたら、売れた。 本書が伝えるのは、その逆説です。
お客様を説得する前に、まず理解しようとする。結果を追う前に、信頼を積もうとする。雑談、質問、沈黙、選択肢の示し方——商談のひとつひとつを丁寧に見直していく。その積み重ねが、やがて大きな信頼の差になる。松本さんは2年後、社内で上位0.1%だけが選ばれる「社長賞」を受賞しました。
「売らない、って……何もしないわけじゃないんですね」。翔太がつぶやきました。美和子は静かにうなずきます。「むしろ逆ね。お客さんに必要とされる人に、なろうとすることだから」。
松本義史さん著『売らない営業』は、新星出版社より、全国の書店で発売中です。最下位の営業が、売るのをやめてトップになる。その物語の裏にあるのは、特別な才能ではなく、誰にでも始められる「丁寧さ」でした。目先の数字を追いかけるのではなく、お客様に必要とされる営業へ。そう静かに背中を押してくれる一冊です。
聴きどころ ①退職願いをカバンに入れて、挑んだ商談
5,000人中最下位。新入社員にも負ける成績。そのしんどさは、生半可なものではなかったと松本氏は振り返る。
「このままやってみてダメだったら、もう本当に違う人生歩こうと思って」
退職願いを3ヶ月ほどカバンに入れたまま、最後の挑戦として臨んだのが、先輩から半ば冗談交じりに投げかけられた「20連敗を目指してみたら」という言葉だった。断られることを恐れなくなった瞬間、皮肉にも商談はうまく転がり始めた。
聴きどころ ②主語を、自分からお客様へ
売れなかった頃の松本氏は、商品説明にも自分の話し方にも自信があった。それでも売れなかった理由を、こう語る。
「主語をお客様に変えて、お客様が何を求めているかとか、何が困っているかっていう、そこに変えた途端に急に売れるようになって」
自分がどう話すか、どう黒字を作るか——すべての主語が「自分」だった状態から、「お客様は何に困っているか」へ。本書の第一章が、営業本には珍しい「5本の腕時計」の使い分けから始まるのも、この視点転換の表れだ。小寺編集長はこの構成を「営業本というよりコミュニケーション本」と評した。
聴きどころ ③「戦略的失注」——売らない勇気
本書屈指のパワーワードとして小寺編集長が挙げたのが「戦略的失注」だ。お客様が欲しいと言ってくれていても、あえて売らない選択をする。
「タイミングによっては、今売らないほうがいいなっていうとき……あえて今じゃないっていうことで突き放すっていうのも大事」
目先の契約より、長期の信頼を選ぶ。この姿勢が、副業として始めた営業代行での2年間累計1.5億円という実績にもつながっている。
聴きどころ ④会社員のまま、9つの副業へ。そして見えた師弟のつながり
損害保険ジャパンに在籍したまま本を出す。会社の内外から幾度も問い合わせを受けたという珍しい立場について、松本氏は率直に語った。今は副業が9つに広がり、社外研修は累計3,000回を超える。それでも軸足は「会社員」から動かさない。
「会社員を続けながらこれからも活動したいと思ってまして、会社員を元気にしたいなっていうのが自分の中のビジョンがあります」
対談後半では、意外なつながりも明らかになった。松本氏が執筆にあたり助言を受けた著者の一人が、小寺編集長も担当してきた永松茂久氏や今井孝氏だったのだ。他社の著者を読み解くはずの対談が、業界内の師弟関係を静かに浮かび上がらせる——この番組らしい瞬間となった。
越境がもたらしたもの
編集を担当していない読み手だからこそ、松本氏の「珍しい立場」に遠慮なく切り込めた。在職中に本を出すことの葛藤、失敗談を隠さず書く姿勢、そして本を書くという初めての挑戦を先輩著者から学んだ過程——担当編集なら聞きづらいことも、越境の読み手だからまっすぐ問える。
「私を作った一曲」として松本氏が選んだのは、ゆず「虹」。かつて成果が出なかった時期、繰り返し聴いていたという。
「超えて超えて超えて、というところが、自分が苦しんでいても超えていく先に、大きな未来があるよっていうのを、勇気づけてくれた曲になります」
5,000人中最下位から社長賞へ。その道のりを、これほど率直に語った55分。放送を聴けば、「売らない」という選択がなぜ結果につながるのか、その答えが腑に落ちるはずだ。
ゲスト著者プロフィール
松本 義史 氏(まつもと よしふみ)
福岡県のご出身。同志社大学を卒業後、損害保険ジャパンに入社し、営業ひとすじ20年。今も現役で第一線に立つ会社員でいらっしゃいます。けれど、はじめから「売れる営業」だったわけではありません。入社10年目には、商談がまとまらないまま15連敗。全国およそ5,000人の営業のなかで、最下位にまで沈んだご経験をお持ちです。転機は、上司の「こうなったら20連敗を目指してみよう」というひと言。肩の力が抜け、「売るのをやめてみよう」と決めたところから、連敗を脱出。雑談や質問、沈黙、選択肢の示し方——商談を一つひとつ見直した結果、2年後には、社内で上位0.1%だけが選ばれる「社長賞」を受賞されました。2022年からは副業でオンラインビジネスにも挑戦し、2年間で累計1.5億円を売り上げ。これまで社外研修は累計3,000回を超え、1,500名以上を直接指導されています。
『売らない営業』(新星出版社/2026年4月16日発売)
「トップセールスと平凡なセールスの差は、ほんのちょっとした気づき」——5,000人の中で最下位だった著者が、実体験から導き出した「丁寧さ」の営業論。腕時計やボールペンの使い分けから、戦略的失注、クレーム対応まで、実践的な工夫が詰まった一冊。
GUEST'S WORKゲストの活動・関連リンク
- YouTube「【収入が変わる行動の専門家】松本義史」 ↗(会社員のまま収入の柱を増やすための思考と行動を発信)
- X(旧Twitter・@bunsan_toushi)↗(仕事・副業・人間関係・マインドについて本音で発信中)
ON AIR放送情報
- 放送日時:2026年9月5日(土)23:00〜23:55
- 放送:全国110局のコミュニティFMで放送
- ♪ 私を作った一曲:ゆず「虹」(松本 義史 氏 選曲)
ABOUT@本が読みたくなる、ラジオ
「@本が読みたくなる、ラジオ」は、自分が編集していない、他社の著者の本を、現役編集長が読み解くという決めごとを持つ対談ラジオ番組です。担当編集という利害から自由な読み手だからこそ、著者の本質にまっすぐ切り込む。ナビゲーターのあつみゆりかとともに、全国110局のコミュニティFMで放送中。
文責:編集部 Toshi Kinoshita