ON AIR REPORT 放送レポート
EP11 2026年9月19日(土)23:00〜23:55 本レポート

樺沢 紫苑 先生(かばさわ しおん)

精神科医/作家/映画評論家/著書55冊・累計発行部数280万部

「バカになるAIの使い方」をやめさせたい。
——精神科医が、認知負債という言葉に込めた危機感。

シリーズ100万部『アウトプット大全』の著者・樺沢紫苑先生が、最新刊『知性大全』を引っさげて登場。読み解くのは、飛鳥新社の矢島和郎編集長。実はこの二人、旧知の仲だ。かつて矢島氏が編集を手がけた樺沢先生の一冊『精神科医が見つけた3つの幸福』というつながりを経て、今回はサンクチュアリ出版から出た新刊を、あえて他社の目でもう一度読み解く。「AIを使うほど頭が悪くなる」——精神科医としてそう言い切る樺沢先生が、この本に込めた本当の動機とは。

樺沢紫苑 先生

この対談は、どういう“越境”なのか

「@本が読みたくなる、ラジオ」には、ひとつの決めごとがある。自分が編集していない、他社の著者の本を、現役編集長が読み解く。 今回読み解くのは、飛鳥新社・常務取締役編集長の矢島和郎。相対するのは、サンクチュアリ出版から『知性大全 AI時代に不可欠な力』を上梓した樺沢紫苑先生だ。

ただし、この回の越境には少し特別な背景がある。矢島氏はかつて、樺沢先生の著書『精神科医が見つけた3つの幸福』の編集を担当した間柄。担当編集という立場を離れてなお、勝手知ったる相手にどこまで踏み込めるか——旧知の編集者だからこそ生まれる遠慮のなさと、越境読み手としてのフラットな視点。その両方が、この回の対話を支えている。

今日の一冊——美和子と翔太が出会う『知性大全』

番組は、ある場面のナレーションから幕を開ける。会議室、企画会議が始まる十分前。翔太はノートパソコンの画面に、生成AIに書かせた提案書をそのまま映していた。通りがかった美和子がふと画面を覗き込む。「これ、全部AIに作らせたの?」翔太は少し気まずそうに答える。「はい……早いし、それっぽい文章になるので。でも、いざ質問されたら答えられる自信がなくて」

美和子はうなずく。「それ、知性の話だね」——今日の一冊、樺沢紫苑先生の『知性大全 AI時代に不可欠な力』を、二人のやりとりが解きほぐしていく。

この本が説くのは、知る・考える・決断する・行動する・フィードバックする・整えるという「知性のサイクル」。AIに聞くだけなら誰でもできる。でも、その情報を自分の言葉に変えて、決めて、動く。そこまでやりきる力が、これからの知性なんだ——美和子の言葉に、翔太は画面の提案書を見つめ直す。「……このままじゃまずいですね。自分の頭で、もう一度組み立て直します」

聴きどころ ①なぜこの本を書いたのか——「認知負債」への危機感

「2025年6月、AIに文章を書かせると文章力や脳の働きが低下するという衝撃的な論文が発表された」。樺沢先生はこの現象を「認知負債」と呼ぶ。ほとんどの人はこの言葉すら知らないまま、毎日AIを使っている——その危うさを、精神科医として看過できなかったのだという。

もう一つ、樺沢先生が本書執筆の動機として挙げたのが、海外でAIとの対話をきっかけに自ら命を絶ってしまうケースが相次いで報告されている現状だ。AIの過剰な共感が、ユーザーの判断を思わぬ方向へ後押ししてしまう。脳やメンタルに甚大な悪影響を与えかねないこの危険性を、「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンに掲げてきた精神科医として、見過ごすわけにはいかなかった。『知性大全』という一冊は、AI時代の実用書であると同時に、樺沢先生自身のビジョンの延長線上にある。

聴きどころ ②「バカになるAIの使い方」をやめさせたい

「AIを使う9割以上の人は、間違った使い方をしている」。樺沢先生はそう言い切る。AIに仕事を丸投げすれば認知負債を引き起こし、一言で言えば「AIの使い過ぎでバカになる」。だが一方で、地頭を鍛えるAIの使い方もある——バカになる使い方はやめて、知性を磨く道具としてAIを使ってほしい、というのが本書のメッセージだ。

収録本編ではさらに、AIとスマホの依存性の違いにも踏み込んだ。キーワードは「個別最適化」。スマホの情報は万人向けだが、AIは個人にカスタマイズされた答えを返してくる。

「だからこそスマホ依存以上にAI依存が問題になってくる」

日本人の使用率がまだ50%程度という今のタイミングで、この本を世に出せたことの意味を、樺沢先生は静かに語った。

聴きどころ ③タイトルは、一度「知動力」という没企画だった

55冊を書いてきた著者が、なぜ今「知性大全」というタイトルにたどり着いたのか。その裏話は、思いがけずアニメがきっかけだったという。

樺沢先生が挙げたのは、地動説を巡る漫画・アニメ『チ。――地球の運動について――』。知識のために命を懸ける物語に触れたとき、ある気づきが降りてきたという。

「知性というものが、要するに皆さんと語る時代が来たな」

そのときの企画書のタイトルは、実は「知性大全」ではなく「知動力」だった。だがサンクチュアリ出版に持ち込むと、「知動力はちょっと造語でわかりづらいからダメです」と一度ボツに。そこから2ヶ月かけて練り直し、たどり着いたのが今の「知性大全」だった。目次だけでも3〜4ヶ月、何度も書き直したという執念の跡が、この一冊には詰まっている。

「知性」を分解するにあたっては、ChatGPTやGeminiなど複数のAIに「知性とは何か」を問い続け、そのやりとりは2000プロンプト、100万文字分にのぼったという。知る・考える・決断する・行動する・フィードバックするという5ステップは、その壁打ちの果てに浮かび上がってきたものだ。

聴きどころ ④「決断疲れ」をなくすルールと、旧知の編集者が見た“らしさ”

本の中で矢島編集長が「ものすごく好きだった」と語ったのが、決断の項目にある「ルール化する」という考え方だ。樺沢先生自身、日々こんなルールを持っている。

「夕方の4時になったらメルマガを書いて5時に発行する、というのを必ずやる」

生活習慣の中に組み込んでしまえば、決断や思考のコストがかからなくなる。歯を磨くのと同じレベルまでルーティン化すれば、決断疲れという脳疲労の重要な要素を減らせるのだと言う。

「矢島さんから見て、この本のどこが樺沢先生らしいと感じましたか」——あつみの問いに、矢島編集長はこう答えた。理屈よりも、行動するための具体的な方法をしっかり示してくれているところ。決断の手前でつまずいている人のために、決断そのものを練習できる項目を入れてくれたことに、これまでの本にはない使いやすさを感じたという。かつて『3つの幸福』を共に作った二人だからこそ言える率直な感想だ。

番組の終盤、樺沢先生は自身が17年続ける出版塾「ウェブ心理塾」の話にも触れ、1年ぶりの塾生募集についても告知。情報発信から本を書くところまで導く活動への思いを語った。

越境がもたらしたもの

編集を担当していない読み手だからこそ、率直に聞ける問いがある。一方で、かつて共に一冊を作った間柄だからこそ踏み込める領域もある。この回の対話は、その両方が重なったところに生まれた。「認知負債」という言葉に込めた危機感、「知性大全」というタイトルに至るまでの二度の書き直し——担当編集であれば聞きづらいかもしれない執筆の裏側も、越境の読み手だからまっすぐ問えた。

樺沢紫苑という人物を、その動機と舞台裏から立体的に浮かび上がらせた55分。放送を聴けば、なぜこの精神科医が「知性」という言葉にこだわったのか、その答えが腑に落ちるはずだ。

収録中の樺沢紫苑先生と矢島和郎編集長
スタジオでの収録風景
収録を終えた出演者一同
収録を終えて(MUSIC BIRDスタジオにて)

ゲスト著者プロフィール

樺沢 紫苑 先生(かばさわ しおん)

精神科医、作家、そして映画評論家として活躍。1965年札幌市生まれ。札幌医科大学医学部を卒業後、2004年から3年間、アメリカ・シカゴのイリノイ大学精神科に留学。帰国後は樺沢心理学研究所を設立し、「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンに掲げ、YouTubeチャンネルは登録者70万人超、メールマガジンは12万人が購読するなど、累計100万人を超える方々に向けて情報発信を続けている。これまでの著書は55冊、累計発行部数は280万部を突破。シリーズ累計100万部を超える『学びを結果に変えるアウトプット大全』をはじめ、数々のベストセラーを世に送り出してきた。

『知性大全 AI時代に不可欠な力』書影

『知性大全 AI時代に不可欠な力』(サンクチュアリ出版)

知る・考える・決断する・行動する・フィードバックする・整えるという「知性のサイクル」を、AI時代に必要な力として初めて一冊にまとめた本。習慣力、決断力、読解力、文章力、対話力、地頭力——AIが答えを出す時代だからこそ問われる、人間にしか磨けない力の全網羅。

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ON AIR放送情報

  • 放送日時:2026年9月19日(土)23:00〜23:55
  • 放送:全国110局のコミュニティFMで放送
  • ♪ 番組からの一曲:Neil Diamond「Song Sung Blue」(樺沢先生が絶賛した映画『ソング・サング・ブルー』の主題歌にちなみ、番組側で選曲)

ABOUT@本が読みたくなる、ラジオ

「@本が読みたくなる、ラジオ」は、自分が編集していない、他社の著者の本を、現役編集長が読み解くという決めごとを持つ対談ラジオ番組です。担当編集という利害から自由な読み手だからこそ、著者の本質にまっすぐ切り込む。ナビゲーターのあつみゆりかとともに、全国110局のコミュニティFMで放送中。

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文責:編集部 Toshi Kinoshita