bon bon cherry
bon bon cherryハイジ合同会社 代表/アクセサリーデザイナー・ハンドメイド販売プロデューサー/勝ち筋設計コンサルタント
写真展のソファで、人生の勝ち筋を決めた。
——専業主婦15年、48歳で起業した「日本一邪魔になるアクセサリー」の作り手。
飛鳥新社編集長・矢島和郎が読み解くのは、フォレスト出版から『「ハンドメイド」で稼ぎたくなったら読む本』を世に出したbon bon cherryハイジ 氏。約15年の専業主婦生活を経て、48歳でアクセサリー作家として起業。いまや学芸大学に実店舗を構え、700人を超える起業家を個別に支えてきた「勝ち筋設計コンサルタント」だ。その出発点は、渋谷の写真展の片隅に置かれた、一脚のソファだった。
この対談は、どういう“越境”なのか
「@本が読みたくなる、ラジオ」には、ひとつの決めごとがある。自分が編集していない、他社の著者の本を、現役の編集長が読み解く。
今回、読み手を務めるのは、『「繊細さん」の本』をはじめ数々のベストセラーを手がけてきた飛鳥新社編集長・矢島和郎。相対するのは、フォレスト出版から本書を上梓したbon bon cherryハイジ 氏。ハンドメイドという一見ニッチなテーマの本を、ヒットを知り尽くした他社の編集長はどう読んだのか。矢島の第一声は、迷いのないものだった。
「ハンドメイドで稼ぎたくならなくても読むべき本」
今日の一冊——美和子と翔太が出会う『「ハンドメイド」で稼ぎたくなったら読む本』
週末の午後、美和子は部下の翔太を伴い、友人の結婚祝いを探しに百貨店の催事場を訪れる。ガラスケースに並ぶハンドメイドアクセサリーに足を止めた翔太は、ふと疑問を口にする。こういうものは、実際どのくらい稼げるのだろう、と。値札をひとつずつ確かめながら、美和子は答える。作れば売れる、という世界ではない。売り方を学んだ人だけが、続けていける世界なのだと。
本書が向き合うのは、日本に約2,000万人いるとされるハンドメイド作家の9割が、思うように稼げていないという現実だ。足りないのは腕や感性ではなく「売れるノウハウ」。価格の決め方、世界観のつくり方、ブランドの育て方——そのすべてを、著者は出し惜しみなく公開している。趣味で終わらせず、事業として続けていく。好きなことを暮らしていける力に変えたい人の背中を、静かに押してくれる一冊だ。
聴きどころ ①専業主婦は、なぜ起業を決めたのか
もともと起業したいという思いはなかった。そう明かすハイジ氏に、矢島が「そもそもなぜ」と問う。答えは、拍子抜けするほど率直だった。
「単純に言いますとお金が足りなかったので、稼ぎたかったっていうのがあります」
40代は体調面の事情も重なり、勤めに出ることも難しかった。実家の父からの援助でなんとかしのいでいたが、47歳のとき、その父が急逝する。子どもたちが留学したい、塾に行きたいと言い出しても、このままでは応えてあげられない——焦りだけが募っていった。
転機は意外なところから訪れる。幼稚園のバザーでぬいぐるみや雑貨の作り方を教えていたハイジ氏に、知り合いの母親たちが勧めたのが、西武渋谷店で開かれていた写真展「Advanced Style」。ニューヨークの街をおしゃれして闊歩する、年配の女性たちのスナップ展だった。大きな指輪をいくつも重ねた手が並ぶ一枚の前で、ハイジ氏はそばのソファに座り込み、15分、20分と動けなくなったという。
「こういうおばあちゃんになりたい」
そして、こう続ける。
「おばあちゃんになったらおしゃれになるわけじゃなくて、もう今から準備しないと間に合わない」
アクセサリー作家として起業すれば、どんなに個性的な装いをしていても周りは許してくれる。うまくいけば、お金も入ってくる。その場で、bon bon cherryハイジが生まれた。当時の自分を、本人はこう振り返る。黒髪のおかっぱにノーメイク、Tシャツにジーパン。
「普通のおばさんです」
いまの華やかな姿からは想像もつかない出発点を、笑って語れる。その軽やかさこそが、この人の強さだ。
聴きどころ ②バンダイの先輩が教えた、色鉛筆の話
本書の網羅性に驚いた矢島が、苦労の末に体系化したのかと尋ねると、ハイジ氏は首を振る。
「実は起業にあたって苦労はなくて」
下敷きにあるのは、株式会社バンダイ宣伝部時代に身につけたマーケティングの基礎だ。店頭での商品の並べ方を教えてくれた営業の先輩は、色鉛筆を何十本も並べて「どれを選ぶ?」と聞いてきた。選べずに迷う彼女に、先輩は言った。
「お客さんて迷わせちゃダメなんだ」
この教えは本書の随所に生きている。価格は松竹梅で組み立てる。同じ商品の色違いは3色に絞る。実店舗に立てば、迷っているお客様の多くが、結局は最初に手に取ったものを選ぶことも見えてくる。だからハイジ氏は、その一つを見届けて背中を押す。
一方で、ネット集客についての見立ては冷静だ。SNSを開けば、もはや同業者だけが競争相手ではない。
「全世界がライバル」
だからこそ、最低限のネット対策は押さえつつ、リアルで人と接したほうが少ない労力で売れる人も多い、と説く。やみくもに「バズ」を追わない。結果につながることだけを選び抜く姿勢が、この本の信頼感を支えている。
出版への道のりも、同じ発想から始まった。同業者からデパートの取引やSNS運用について聞かれるたび、2〜3時間の立ち話が続く。これを本にして渡せばいいのでは——そう考えて出版セミナーの門を叩いた。
「とにかくゴールさえ決めてしまえば、あとはゴールに向けてやるだけ」
毎年立てる計画は、毎年かなう。その年に残っていたのが、出版だった。
聴きどころ ③値段に、ゼロをひとつ足せますか
恒例の「編集長の読みどころ」で矢島が注目したのは、本書のキーワード「マイブランド」だ。幼いころから虫が好きで、夢中になった映画は何度でも観る。ハイジ氏は子どものころに好きだったものを手放さず、それを事業の軸にしてきた。この日の胸元にも、蜂のブローチが光っていた。矢島はその歩みを、こう読み解く。
「ずっと好きだったことの出し方が変わってきただけ」
ただし、ハイジ氏は「好き」を万能薬にはしない。
「好きだから稼げるとも言えない」
仕事には、やりたくないことも難しいことも必ずある。そこで踏ん張れるように、どこかに「好き」を絡めておく。コンサルタントとしての冷静さと、作り手としての情熱が同居している。
続く「矢島ゴッドの小ネタ集」で矢島が選んだのは、本書の価格設定の教えだった。ハイジ氏はクライアントにいつもこう伝えるという。
「ゼロを一つ増やしましょう」
たいていの人は、悲鳴をあげる。それは、その価格で買う人たちを知らないからだ。だから、ホテルや高級店に足を運んでみる。知らない人たちを、知っている人たちに変える。実はハイジ氏自身、保険営業の時代に全国1万人中トップ10に入った実績を持つが、その原点は極度の人見知りだった。営業が苦手だからこそ、バンダイで学んだマーケティングを生かして考え抜いた答えがこれだ。
「お客様から買いたいって言ってもらう状況を作る」
梱包に孔雀の羽を一本添えて送る、という細部へのこだわりも、その延長線上にある。
聴きどころ ④遅い挑戦を、背中で押してくれた人たち
本書の後半で、ハイジ氏は経営者として参考にしている人物にドラァグクイーンの先駆者、ル・ポールを挙げている。幾重もの困難を越えて頂点に立った生き方と、見られることを恐れないエンターテインメント性。人前に立つ仕事をする者として、いまも常にウォッチしているという。初めての本の企画書を練っていたころ、YouTubeで出会ったスーザン・ボイルの存在も、遅い挑戦への勇気をくれた。
挑戦は、思わぬ形で報われていく。ラフォーレ原宿に置いていたアクセサリーを久本雅美さんが買い求め、いとうあさこさんへプレゼント。あさこさんがさまざまな番組で身につけてくれたことで、同業者から「テレビに出てますよ」と連絡が入るようになった。コンサルタントとしても、いまや顧客の半分はハンドメイド以外。学校法人の経営者から声がかかったときは、思いがけない広がりがうれしかったと話す。
番組の終盤、ハイジ氏から矢島へ質問が向けられた。「2冊目を出したい。どう企画書をつくればいいか」。矢島は編集者として、1冊目で特に反響の大きかった部分を掘り下げ、ブランド術やマーケティング術として広げる道を示した。あつみも、メソッドがハンドメイドに限らず通用する以上、読者層を広げる余地があると続ける。スタジオでは、思わず読みたくなる仮タイトルまで飛び出した。
もちろん、収録の熱のなかで交わされた言葉であり、形になるかどうかはこれからだ。ただ、他社の編集長が著者の次の一冊を本気で考える——そんな芽が生まれる瞬間を、EP17ははっきりと記録している。
越境がもたらしたもの
担当編集ではない読み手だからこそ、矢島は本書を「ハンドメイドの本」という枠から解き放ち、あらゆるスモールビジネスに通じるブランディングとマーケティングの教科書として読み解いた。そしてその読み方が、ハイジ氏という人物の芯を照らし出す。子どものころの「好き」を手放さないこと。迷わせない売り方を徹底すること。自分にゼロをひとつ足す覚悟を持つこと。
写真展のソファで動けなくなった「普通のおばさん」は、10年あまりで、多くの起業家の勝ち筋を描く人になった。放送を聴けば、その軌跡がただの成功談ではなく、誰にでも再現できる技術の積み重ねだったことがわかるはずだ。
ゲスト著者プロフィール
bon bon cherryハイジ 氏(ぼんぼんちぇりーはいじ)
勝ち筋設計コンサルタント。bon bon cherryハイジ合同会社 代表。株式会社バンダイ宣伝部、生命保険会社での営業職を経て、結婚・出産を機に約15年を専業主婦として過ごす。48歳で、趣味で始めたハンドメイドアクセサリーづくりを本格的な事業へと発展させ、東急東横線・学芸大学駅近くに実店舗「bon bon cherryハイジの店」をオープン。キャッチコピーは「日本一邪魔になるアクセサリー」。個性的なデザインと緻密な価格戦略・ブランディングを武器に、女優やタレントをはじめ幅広いファンから支持を集める。現在は、月商100万円を安定して超えるブランドを作りたい人や「好きなことで稼ぎたい」1人起業家を支援するコンサルタントとしても活動し、クライアント実績は700人。
『「ハンドメイド」で稼ぎたくなったら読む本』(フォレスト出版/2022年8月10日発売)
約2,000万人のクリエイターがいるといわれるハンドメイドの世界で、9割が「売れない」状況にある。その差を分けるのは「売れるノウハウ」だ——。月商100万円超のブランドを育てた著者が、価格設定、世界観づくり、ターゲットの決め方、SNS活用まで、売れるハンドメイド作家になるための考え方と実践法を徹底的に公開。Amazon4部門で1位、4刷1万部。オーディブルでも配信中。
GUEST'S WORKゲストの活動・関連リンク
- bon bon cherryハイジ合同会社 公式サイト ↗
- YouTube「ハンサム女子の学び場」↗(スモールビジネスのオーナーに向けた売上アップのヒントを、週2回のライブ配信で発信中)
ON AIR放送情報
- 放送日時:2026年10月31日(土)23:00〜23:55
- 放送:全国110局のコミュニティFMで放送
- ♪ 私を作った一曲:スーザン・ボイル「夢やぶれて」(ミュージカル『レ・ミゼラブル』より/bon bon cherryハイジ 氏 選曲)
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「@本が読みたくなる、ラジオ」は、自分が編集していない、他社の著者の本を、現役編集長が読み解くという決めごとを持つ対談ラジオ番組です。担当編集という利害から自由な読み手だからこそ、著者の本質にまっすぐ切り込む。ナビゲーターのあつみゆりかとともに、全国110局のコミュニティFMで放送中。
文責:編集部 Toshi Kinoshita